なにわノリダーのぬるい自転車日記

ロードバイクを大阪ではじめ、つくば、シカゴ、守谷とぬるく走ってます。

つくば ラーメン おすすめ  喜乃壺(きのこ)

つくばへ所用でいきました。4ヶ月ほど左膝の痛みが治らず、これはいよいよ半月板損傷ではないかとスポーツ専門の整形外科を教えてもらって、MRI検査をしてもらった。結局歳なりに軟骨はすり減っているものの、半月板に損傷もなく、全体的に炎症もないことがわかった。対処法としては左足の筋肉をつけることということでした。知らぬ間に左足をかばって筋肉が落ちていた。それに加えてもともと右足軸なのもある。

ともあれ、重症ではなかったので、ほっとして腹が減った。整形外科からだと喜乃壺(きのこ)が近い。つくば駅から西大通りを車で10分くらい下ったところにある。
黒真空蕎麦を注文。こってり魚介豚骨にマー油が掛かったもので、緊張がとけて急に腹減ったこのシチュエーションにぴったりです。

以前他にもたべてます。

支那蕎麦醤油。あっさり系だけど、いわゆる昔ながらの支那蕎麦の味で、スープにからむ麺が絶妙に何度たべてもあきない。

つけ麺の大盛りを頼みました。鶏と言いながら、煮干し系で濃い味付けで大盛りはかなり食いでがありました。夜になっても腹がすきません。ラーメンかと思ってましたが、蕎麦ですね。チャ―シュウはしっかり噛みごたえとうまみがあっておいしかったです。

やはり店の看板の煮干蕎麦(醤油、細麺)
スープの透明さはなかなか他ではないもんで、それだけでいい気分になります。スープはあっさり系といえますが、煮干しの軽い苦みと風味がしみこんでいます。麵は細麺ながら、不思議とガツンと腹持ちします。

他にも食べてないけど、台湾ラーメンなどあります。https://tabelog.com/ibaraki/A0802/A080201/8010935/dtlmenu/

店員さんの愛想も良いし、景気も良い。
とにかく何度行っても、何を頼んでも裏切らない、正統派です。ぜひぜひ。

那須高原ロングライド

Gaminデータはこちらhttps://connect.garmin.com/app/activity/23565680538

今年も性懲りもなく那須高原ロングライドに参加してきました。今回で4回目です。
今回はいつものI里さんに加え、アマチュアライダーとしてめちゃくちゃ早いA松さんの3名で参加しました。

今回もというか、また小雨模様ですね。4回とも小雨模様のスタートですので、さすがに雨男であると言うことは認めざるをえません。

エイドステーションは15キロくらいごとにあって、しっかり栄養補給できるし、ちょうど良い休憩になります。

I里さんも、A松さんも登りは早いので、一緒に行くわけにも行かず、わたしは踏みすぎてバテないようにゆっくり登っていきました。でも、A松さんが降りてきてゆっくり着いてきてくれたりしてもらい、良いペースで登れました。お陰でSTRAVAのデータだと、Mtジーンズからロープウエイ乗り場まで、自己新記録になっていました。ありがたいことです。

一番高所の那須岳のロープウエイ乗り場では、またうなぎ握りが復活していました。
ここに来る途中に関門があるのですが、ここは余裕で通過。もちろん時間的には余裕のはずですが、前々回はひっかかりそうになったので、心配でした。

ロープウエイ乗り場からは基本下り基調なのですが、実は途中に何カ所も登りがしこんであってこれがきついのなんの。ただ、さすが4回目なので、この登りの覚悟ができてますので、心は折れずゴールしました。

毎回、なんとなくデッドヒートする方(同じようなペースで走って何度も会う方)がいらっしゃいます。これまでは、メグミルクのジャージのかただったのですが、今回はSUNというジャージの方とデッドヒートしてました。最後から2番目のエードステーションでお見かけましたが、結局先にゴールされてました。また、来年!

帰りの温泉は、コースの途中にあった東山道那須温泉

(HPより)源泉かけ流しで、泉質は無色・透明・無臭のアルカリ性単純温泉で肌に優しくなめらか。露天風呂から、夕日や雄大な那須連山の絶景が見渡せます

前泊のラフォーレ那須は、硫黄泉だったのですが、こちらはアルカリ泉で指紋がなくなるやつ(?)です。これもこれでしっかりと汗がながれて疲労回復になりました。

(インスタグラムより)洋食厨房スライヴ・イーヴス 創業大正13年地産地消推進店 人気の『焼きカツ』や『ポークソテー』是非ご賞味ください!


晩飯は帰る途中でみつけた洋食店のスライヴイーヴス。地元のの三元豚をつかって実にうまい。わたしはカツ丼、他の2人は、とんかつに焼きトン。いづれも美味しそうでした。次回も立ち寄りたい店です。

ともあれ、還暦にて4回目の那須を完走してやれやれでした。

 








 

茨城県守谷市~青森自転車旅 Day6 安比高原から青森のゴールへ。

雷雨を気にしながら154km走って、ついにゴール

守谷から青森を目指す自転車旅も、いよいよ最終日になった。

Day6は、岩手県の安比高原から青森県青森市まで。
走行距離は154.90km。
走行時間は11時間14分45秒。
獲得標高は824m。

数字だけ見ると、最終日にやる距離ではない。しかし、ここまで来たら青森まで行きたい。そういう気分になっていた。

朝5時の温泉、そして6時半出発

安比高原の森のホテルを、朝6時半に出発した。前夜は温泉つきの宿で、朝も5時から温泉に入った。これが実に気持ちよかった。体は疲れているはずなのに、朝の高原の空気と温泉で、思ったよりすっきり目が覚めた。 これ書いてたらまたあの風呂に入りたくなった。

【写真挿入:安比高原 森のホテルを出発】

ただし、のんびりしている場合ではなかった。この日は雷警報が出ていた。しかも雨雲が、思ったより早くこちらに来るらしい。本当はワールドカップの日本対オランダ戦も見ていたのだが、最後まで見ている余裕はない。サッカーも気になる。しかしこちらは安比高原から青森まで154kmである。テレビの前でうなるか。雨雲の前に逃げるか。

結局、後者を選んだ。

国道282号で鹿角へ向かう

ホテルを出てからは、基本的に国道282号を走っていく。目指すのは秋田県鹿角市方面である。

【写真挿入:国道282号を北へ。山沿いの道を急ぐ】

空はどんよりしている。道は広いが、雷警報が出ている朝に山沿いを走るのは、あまり気分のいいものではない。とにかく早くこの山沿いを越えてしまいたい。そんな気持ちでペダルを回した。

国道282号は、山越えの道という印象だったが、実際に走ってみると、思ったほど険しい道ではなかった。路面はところどころガタガタしている。
しかし交通量はそれほど多くない。途中に店もあり、完全な山奥という感じでもない。

【写真挿入:山あいの国道282号。実は下り基調の道】

そして、しばらく走っていて気づいた。あれ、ずっと下っているではないか。

昨日、安比高原まで一生懸命登った分が、ここで返ってきている。標高の貯金である。
現金の貯金はなかなか増えないが、標高の貯金は正直だ。登った分だけ、だいたい下らせてくれる。

八幡平の分水嶺を越える

しばらく進むと、八幡平の山の中らしい雰囲気になってきた。

標識には、弘前 92km 鹿角 31kmとある。

【写真挿入:八幡平・樹海ライン分岐/弘前92km、鹿角31kmの標識】

弘前まで92km。まだ遠い。ほんとにいけるのか?
しかし、青森へ向かう最終日としては、少し現実味のある数字になってきた。

近くには、八幡平・樹海ライン分水嶺の案内板があった。

【写真挿入:八幡平・樹海ライン分水嶺の案内板】

ここを境に、水の流れが分かれる。片方は太平洋側へ、もう片方は日本海側へ。

水は勝手に流れていくが、人間は自分でペダルを踏まないと進まない。分水嶺という言葉には、なにか旅心をくすぐるものがある。いよいよ北東北の山を越えて、青森へ向かっているのだという感じがした。分水嶺を越えると、道は下りになった。

【写真挿入:分水嶺を越えた先の長い下り道】

長い直線の多い、気持ちのいい下りだった。山の間を、道がすうっと伸びている。
車も多くない。こういう道は本当にありがたい。空はまだ曇っている。
雷雨の心配も消えたわけではない。

小さな駅と、少し変な目

下り基調の道をしばらく進む。途中、これといった大きなランドマークはない。
山、道、畑、また山。自転車旅では、こういう区間が長い。そんな中で、小さなJRの駅が現れた。田山駅である。

【写真挿入:JR田山駅。小さな駅舎と自転車】

駅舎というより、小屋に近い。JR東日本の花輪線(はなわせん) で

好摩駅(岩手県)〜大館駅(秋田県)を結ぶ路線です。

自転車を立てかけて駅舎の写真を撮っていると、中におばちゃんが一人いた。
列車を待っていたらしい。こちらは旅情にひたっているつもりだが、向こうから見ると、「この人、何を駅の小屋なんか撮っているのか」という顔である。

秋田が見えてきた

さらに走っていくと、道の上に看板が出てきた。

秋田へどうぞ。鹿角市まで24km。

【写真挿入:秋田へどうぞ。鹿角市まで24kmの看板】

まだ秋田県に入ったわけではない。でも、この「どうぞ」というのがうれしいんだな。

はい、では秋田へおじゃまします。できれば雨雲は通さないでください。

清流沿いの道と湯瀬温泉郷

このあたりの道は、清流の横を走る気持ちのいい道だった。

【写真挿入:清流沿いを走る。湯瀬温泉郷の手前】

川の音が聞こえる。両側には濃い緑。山道ではあるが、暗い感じはない。

マイナスイオンというものが本当に効くのかは知らない。しかし、少なくとも気分には効いた。

やがて、湯瀬温泉郷のあたりに入った。

【写真挿入:湯瀬温泉郷。清流と線路が並ぶ風景】

川のすぐ横をJR東日本の花輪線(はなわせん)の線路が走っている。
その向こうには山の緑。川沿いには温泉宿らしい建物も見える。これは、いかにも温泉郷である。清流があり、鉄道があり、山があり、湯がある。旅情を構成する部品が、きれいにそろっている。こういう場所に来ると困る。入りたい。非常に入りたい。

朝5時に安比高原で温泉に入ったばかりなのに、もう入りたい。しかし、ここで温泉に入ったら終わりである。体も心もふにゃふにゃになって、青森どころではなくなる。

湯瀬温泉、いつか入りたい。今日は泣く泣く通過である。

ついに秋田県鹿角市へ

そして、ついに秋田県に入った。

【写真挿入:秋田県鹿角市に入る。初めての秋田サイクリング】

看板には、秋田県 鹿角市とある。秋田県を自転車で走るのは、これが初めてである。
岩手県も今回が初めてだったが、秋田県も初めてだ。守谷からここまで来たのか。
そう思うと、少し胸の奥がじんとした。もちろん、まだゴールではない。
青森まではまだ遠い。しかし、県境の看板というのは、長距離を走っている人間にはよく効く。スマホの地図で見る一線とは違う。実際にペダルを踏んで、汗をかいて、尻を痛めて、ようやくたどり着く県境である。よくここまで来たな。

そう思った。秋田県に入ってからも、道はしばらく川沿いに続いた。

【写真挿入:赤い橋の上から清流と自転車】

清流が横を流れ、ところどころでJRの線路と交差する。川、線路、道路。
この三つが山の間を、からまりながら下っていく。

【写真挿入:赤い橋と山道。清流沿いを下る】

こういう道は、自転車で走ると本当に気持ちがいい。車で通れば、あっという間に過ぎてしまう景色かもしれない。しかし自転車だと、川の音も、山の湿った匂いも、線路の細いカーブも、いちいち体に入ってくる。

鹿角市街へ。空が明るくなる

湯瀬温泉郷を過ぎると、少しずつ山の気配がゆるんできた。

【写真挿入:鹿角市街地方面へ。十和田湖の看板が出てくる】

道の先に市街地らしいものが見えてくる。信号が出て、建物も増えてきた。
山越えを一つ終えた感じがして、ここで少しほっとした。橋の上で、いったん後ろを振り返った。

【写真挿入:橋の上から、越えてきた山側を振り返る】

さっきまで走ってきた山の方角である。峠そのものはもう見えない。
しかし、川の向こうに山が重なり、その上を大きな橋が渡っている。あそこから降りてきたのか。

今回の旅では、なぜかバス停の写真をよく撮っている。

【写真挿入:秋北バス「砕発電所前」バス停】

鹿角に入ると、ついに秋北バスのバス停が出てきた。おお、秋田のバス停だ。

県境の看板で秋田に入ったことはわかっている。しかし、バス停を見ると、生活圏として秋田に入った感じがする。バス停名は、砕発電所前。これがまた渋い。

鹿角盆地と夏雲

鹿角市の中心部へ向かう国道282号に出ると、景色が一気に開けた。

【写真挿入:鹿角市街へ向かう国道282号。空が明るくなる】

さっきまでの山あいの道から、盆地の道になった。路面もよい。空も明るくなってきた。右手、東側には、鹿角盆地の向こうに山並みが続いている。

【写真挿入:鹿角盆地の東側に連なる山並み】

その上に、もこもことした夏の雲が立ち上がっていた。白くて立派で、遠くから見るぶんには実に美しい。しかし朝から雷警報を気にして走っている身としては、少し不気味でもある。きれいだなあ。でも、こっちに来るなよ。そんなことを思いながら走った。

【写真挿入:夏雲と山並み。雷雲を気にしながらも快走】

このあたりは本当に気持ちよかった。山を越えた。秋田県に入った。空は明るくなった。路面もいい。朝早く出て正解だった。きりたんぽを食う時間もないけど。

平川へ行くか、十和田湖へ逃げるか

鹿角市の市街地に入ると、次の目標がはっきりしてきた。標識には、平川、大館、十和田湖の文字が出ている。

【写真挿入:鹿角市街。平川・大館・十和田湖への分岐標識】

平川は、弘前の手前にある町である。ここを越えれば、青森がかなり現実的になる。

しかし、ここで大いに悩むことになった。雨雲レーダーを見ると、鹿角から平川へ向かう山越えのあたりに、雷雨が来そうなのである。これは困った。

選択肢は二つあった。

一つは、西側の大館市方面へ進み、どこかで雷雨をやり過ごしてから、あらためて平川方面へ向かうこと。もう一つは、今日の青森ゴールをあきらめて、十和田湖方面へ上がり、十和田湖で一泊すること。十和田湖。それはそれで魅力的である。
温泉もありそうだし、湖もある。無理に青森まで行かなくても、旅としては十分に成立する。

しかし、ここまで来ている。安比高原を朝6時半に出て、秋田県に入り、鹿角まで下りてきた。ここで青森行きをあきらめるのか。コンビニで、スマホの雨雲レーダーを見ながら1時間ほど悩んだ。たかが1時間。しかし、長距離自転車旅の途中の1時間は重い。

進むのか。待つのか。逃げるのか。泊まるのか。

峠越えの途中で雷雨に遭うのだけは避けたい。山の中で雷が鳴り出したら、逃げ場がない。それでも、レーダーを何度も見ているうちに、「ぎりぎり平川まで越えられるのではないか」という気がしてきた。気がしただけで、確信ではない。しかし旅というのは、最後はだいたい、気がする、で進む。平川へ向かうことにした。

Day6最大の勝負どころ

平川へ向かう道に入った。

手前に高速道路の入口があり、そこまでは車もそこそこ走っていた。
しかし、その入口を過ぎると、急に車が減った。

というより、ほとんど自分だけになった。

【写真挿入:鹿角から平川へ向かう山道。車が消え、ひとりで登る】

道は森の中へ入っていく。木々の緑は濃く、日差しはところどころ木漏れ日になって落ちてくる。景色だけ見れば、実に気持ちのいい山道である。しかし、こちらの気分はそんなにのんびりしていない。

雨雲レーダーでは、このあたりに雷雨が来る可能性がある。店もない。
逃げ込む場所もない。あるのは木と道路と、自分の自転車だけである。

急ぎたい。しかし、急げない。6日目の脚である。ここまで毎日かなり走ってきて、疲労はしっかりたまっている。気持ちは急ぐが、体は正直で、ペダルはゆっくりしか回らない。この峠を越えられるかどうか。ここが、この日に青森まで行けるかどうかの分かれ目だったと思う。

登る。また登る。カーブを曲がる。まだ登る。

そして、ついに看板が見えた。

【写真挿入:青森県平川市の看板。峠を越えた瞬間】

青森県。平川市。出た。

たぶん、ここがほぼ峠だったのだと思う。距離としては、ものすごく長い登りではなかった。しかし、この日の中では、間違いなく最大のポイントだった。ここを越えたことで、青森ゴールが一気に現実になった。

雷雨警報と、雨の下り

平川市に入ってからは、下りになった。峠を越えたのだから、当然下る。
しかし、安心して気持ちよく下れるかというと、そうでもなかった。

途中に発電所があり、その先に小さな集落があった。そこで、町内放送のようなものが流れた。「雷雨警報が発令されています」というような内容だった。

山の中でそれを聞くと、なかなか効く。こちらはさっきまで、その雷雨に追いつかれないように峠を越えてきたのである。まずい。これはまずい。

そこからは、ビビりながら下った。自転車旅において、ビビることは悪いことではない。むしろ大事である。雷に対して勇敢であっても、あまりいいことはない。

途中で、やはり雨が降ってきた。豪雨というほどではなかったが、カッパを着るには十分な雨だった。濡れた路面を、慎重に下る。雷雨きませんように、、、

【写真挿入:雨上がりの国道7号。秋田・能代・大館方面の標識】

なんとか市街地まで降りて、国道7号に合流した。ここまで来ると、道の雰囲気が変わる。山道ではなく、いよいよ幹線道路である。そして、ついに次の標識が現れた。

【写真挿入:青森60km、弘前23kmの標識】

青森 60km。弘前 23km。青森の文字が出た。これはうれしい。
かなりうれしい。しかし同時に、まだ60kmもあるのか、と思った。

ここまで山を越え、雨にも降られ、カッパを着て下ってきた。青森県には入った。
看板にも青森が出た。それでもまだ60km。この数字は、なかなか人を黙らせる。

弘前へ、そして無心で青森へ

国道7号を北へ進む。雨は弱くなったり、また少し降ったりする。
路面はまだ濡れている。カッパを着たまま走ると、外からは濡れないが、中からじわじわ蒸れてくる。道端に、またバス停があった。

【写真挿入:弘南バスのバス停「九十九森」】

今度は弘南バスである。秋北バスから、弘南バスへ。バス停ハンティングとしては、なかなか順調である。誰に頼まれたわけでもないが、旅の途中でその土地のバス停を撮るのは妙に楽しい。ここまできたらいっちゃえーである。

その後、ついに弘前市に入った。

【写真挿入:弘前市に入る。まだ青森まではあるが、ひとつ大きな区切り】

弘前。この文字を見ると、さすがに気分が上がる。青森市まではまだ距離がある。
しかし、弘前まで来たということは、もう津軽の入口まで来たようなものだ。

本来なら、弘前城でも見て、街を少し歩いて、何かうまいものでも食べればいい。
普通の旅なら、たぶんそうする。しかし、この日はそういう旅ではなかった。

青森まで行く。それだけである。弘前の市街地も走ったのだが、観光もせず、写真もほとんど撮らず、さーっと通り抜けた。弘前には申し訳ない。しかし、こちらにはもう観光するだけの余力がない。

国道7号は大きく、路肩も広かった。かなり走りやすい。

【写真挿入:国道7号を青森方面へ。広い路肩で走りやすい道】

走りやすいのだが、楽ではない。なにしろ、ここまでで相当走っている。
脚はもう、かなりつかってる。文句を言う元気もなくなった脚で、ただペダルを回す。

そして、ついにその看板が出た。

【写真挿入:青森市の看板。ついに市域に入る】

青森市。出た。とうとう青森市に入った。ただし、ここで終わりではない。
青森市に入ってから、青森駅まではまだある。実際ここから長かった、、、

今回の陰の功労者は、お尻だった

青森市に入るころ、ひとつ不思議なことに気がついた。お尻が痛くないのである。

今回の旅では、途中までお尻の擦れにかなり苦しんだ。サドルそのものの痛みというより、皮膚が擦れて痛む感じだった。これが地味につらい。ところが、最終日のDay6は、ほとんど痛みがなかった。理由は一つではないと思う。

途中で擦り傷に抗生物質入りの軟膏を塗ったこと。
毎回クリームを塗っていたこと。
そして、前日に泊まった安比高原の温泉が、皮膚病に効くという湯だったこと。

そのどれが効いたのか、あるいは全部が効いたのかはわからない。しかし、とにかくこの日は、お尻のことをほとんど気にせず走れた。

これは大きかった。

雷雨警報で1時間ほど停滞し、途中で雨にも降られ、それでも154kmを走り切れたのは、脚だけでなく、お尻のコンディションがよかったからだと思う。

長距離自転車旅では、脚より先にお尻が終わることがある。今回、それを身をもって知った。そしてもう一つわかった。自分はもともと、サドルでお尻が痛くなるタイプではない。今回の痛みは、圧迫というより、擦れだった。つまり対策は、擦れを防ぐこと。

クリームを塗る。濡れたまま走り続けない。擦れたところは早めにケアする。
温泉に入れるなら入る。

最終日にお尻の痛みが消えていたことは、今回の旅の大きな発見だった。

青森市の道の駅でマグロ丼

青森市に入ったところで、道の駅があった。

ここでいったん休憩することにした。青森市に入ったとはいえ、青森駅まではまだ距離がある。ここで補給しないと、最後に空っぽになる。道の駅には、青森の海産物を売る直売の店があった。鮮魚を売る店なのだが、丼も食べられるらしい。

そこで、マグロ丼を頼んだ。

【写真挿入:道の駅で食べたマグロ丼。980円とは思えない充実ぶり】

これがよかった。980円で、マグロがしっかり乗っている。量もある。
味もいい。これはもう、コスパ最高と言うしかない。

朝から山を越え、雷雨に追われ、雨具を着て、弘前を素通りして、ここまで来た。
その体に、マグロ丼がしみた。

うまい。

こういうときの丼ものは、ただの食事ではない。燃料であり、救援物資であり、少しだけ人間に戻るための儀式である。

ついに青森駅へ

道の駅でマグロ丼を食べたあとは、もう写真を撮る余裕もあまりなかった。

とにかく青森駅へ向かう。漕ぐ。また漕ぐ。信号で止まり、また漕ぐ。

景色を楽しむというより、ゴールに吸い寄せられている感じだった。

そして、夕方6時前。ついに青森駅に着いた。

【写真挿入:青森駅前。ついにゴール】

青森駅の看板は、思ったより写真に写しにくかった。
後ろには駅ビル、横には青森市営バス。ゴール写真としては少し地味かもしれない。
しかし、こちらとしては十分である。守谷から青森まで。ついに着いた。

ただ、駅前だけでは少し物足りない気もしたので、海の方へ出てみた。駅のすぐそばには、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸がある。その上には青森ベイブリッジが走っている。

【写真挿入:青森ベイブリッジ下、八甲田丸を背景に記念撮影】

ここまで来ると、ようやく青森に来た感じがした。橋。港。連絡船。そして今回の旅ではじめての海である。

目の前に広がっているのは、陸奥湾である。向こうには下北半島の方角が見える。急速に夕暮れになってきた。

【写真挿入:青森港の遊歩道。夕方の陸奥湾と自転車】

まだ、宿きめてないなーー

ゴール後は、青森まちなかおんせんへ

青森駅に着いたのは夕方6時前だった。まずやることは宿探しである。
ここまで走ってきて、今さら宿なしというわけにはいかない。

楽天トラベルで駅前の宿を探す。すると、駅から近くて、しかも源泉かけ流しの温泉がある宿が出てきた。青森まちなかおんせん。

【写真挿入:青森まちなかおんせん。ゴール後の宿】

昨日の安比高原でも温泉に救われた。そしてこの日も、最後は温泉である。

154km走って、雷雨に追われ、雨に降られ、青森駅までたどり着いた体には、ビジネスホテルの小さなユニットバスでは少しさびしい。ここはもう、大きな風呂に入りたい。

さらにありがたかったのは、ロードバイクを2階の別室で預かってもらえたことだ。

154km走って青森まで来て、最後に自転車の保管で心配するのはつらい。
ロードバイクを安心して預けられるだけで、宿のありがたみが三割増しになる。

案内された部屋へ行くと、そこにはもう一台ロードバイクが置いてあった。

おお、仲間がいる。どこの誰かは知らない。青森まで走ってきたのか、これからどこかへ走るのか、それもわからない。しかし、同じように自転車を抱えてこの宿にたどり着いた人がいる。

それだけで、少しうれしくなった。人間は源泉かけ流しへ。自転車は2階の別室へ。

HPより: https://aomori.atinnhotels.com/ 青森にいったらぜひぜひ

どちらも、今日一日よく働いた。

翌朝、青森港へ。次は北海道か

翌朝は、昼の新幹線でのんびり帰ることにした。

急ぐ必要はない。昨日、青森まで走り切ったのだから、今日はもう勝ちである。

朝はゆっくり起きて、また温泉に入った。朝食もついていた。

写真を撮るのを忘れたのだが、これがかなり豪華だった。種類も多く、なんとマグロの刺身まであった。朝からマグロ食べ放題と言われても、そんなに食べられるわけではないが、それでも十分すぎる朝ごはんだった。チェックアウト後、新青森駅へ直行せず、少し海沿いを走った。

【写真挿入:翌朝陸奥湾と自転車】

昨日の夕方とは違って、朝の陸奥湾は静かだった。青い空、青い海。市街地の海なのに驚くほど澄んでいた。

青森港には津軽海峡フェリーが停まっていた。

【写真挿入:津軽海峡フェリー。次は北海道か】

このフェリーに乗れば、北海道である。次は北海道か。
フェリーで渡るか、新幹線で渡るか。そんなことを考えながら、巨大な船を眺めた。

今回の旅はここで終わる。しかし、自転車旅の困ったところは、終わった瞬間に次の道が見えてしまうところである。

新青森駅からは新幹線で帰った。昼前の新幹線に乗り、夕方には守谷に着いた。
6日間かけて走ってきた道を、帰りは4時間ちょっとで戻ってしまう。

新幹線、ありがたや。文明、ありがたや。

 

 

 

茨城県守谷市~青森自転車旅 Day5 岩手県奥州市から安比高原へ

北上川を北へ、麦畑を抜け、盛岡を越えて、最後は高原に吸い込まれる

【写真挿入:Day5の走行ログ地図】

守谷から青森を目指す自転車旅も、5日目である。

この日の出発地は岩手県奥州市。
目的地は八幡平市の安比高原。

距離は126.67km。
走行時間は9時間44分58秒。
総上昇量は827m。

数字だけ見ると、ロードバイクでは普通であるが、毎日走っているので勘弁してほしい。


朝の北上川は、やたらに気持ちよかった

【写真挿入:朝の北上川を渡る。自転車と青空】

この日も朝は快調だった。

5時過ぎには目が覚めた。ふだんの生活では、朝5時に気持ちよく起きるなど、まずない。ところが自転車旅に出ていると、なぜか目が覚める。しかも、目覚めが悪くない。

たぶん、毎日くたくたになるまで走って、夜はビールを飲んで、余計なことを考える前に寝てしまうからだろう。外に出ると、この日もよく晴れていた。

橋の上から見る北上川は、朝の光を受けてゆったり流れていた。
岩手の川は大きい。空も広い。川岸の緑も深い。

そこに自転車を止めて写真を撮ると、「ああ、今日も始まってしまった」という気分になるが、これもうれしい。


北上川右岸を北へ行く

【写真挿入:北上川右岸の自転車道。遠くに山並み、青空】

走り出してすぐに北上川を渡り、右岸に出た。ここからしばらく、北上川の右岸を北へ進んでいく。この日はとにかく北上川沿いを走れば良い。

まずは自転車道や川沿いの道を見つけて、そこを走る。
これは大阪から東京まで走った時も同じだった。太平洋岸自転車道、多摩川、荒川、江戸川。自転車道と書いてあると、なぜか入ってしまう。


りんご畑が出てきた

【写真挿入:北上川沿いのりんご畑。道端に自転車を止めて】

自転車道は、できたり、なくなったりしながら続いていく。

しばらく走っていると、河川敷の下というのか、堤防沿いの道の横に、りんご畑が広がっていた。青森に近づいているから、りんごなのかなと思った。しかし、ここはまだ岩手である。岩手もりんごの産地3位だけど、青森の10分の1の生産量。
木には、まだ小さな実がなっていた。赤くなり始めた小さなりんごが、葉の間にちらちら見える。こういうものを見ると、ただ距離を稼いでいるだけではなく、その土地の中を走っている感じがする。


田んぼの中の、やたら気持ちいい道

【写真挿入:田んぼの中をまっすぐ伸びる道。朝の青空】

りんご畑を過ぎると、今度は田んぼの中をまっすぐ伸びる道に出た。

こういう道は、見た瞬間にうれしくなる。

左右には水を張った田んぼが広がっている。遠くには山並みも見える。


また北上川へ戻る

【写真挿入:北上川沿いの道。川、堤防道、遠くの山並み】

また北上川沿いの道に出た。左手にはゆったり流れる北上川。


北上市が見えてきた

【写真挿入:北上川沿いの道。川の向こうに北上市街が見えてくる】

北上市が見えてきた。川の向こうに建物が並び、少しずつ市街地の気配が濃くなってくる。それでも、こちら側の道はまだ川沿いの静かな道である。


誰もいない道で鹿が出た

【写真挿入:木陰の北上川沿いサイクリングロード。誰もいない道】

北上市街が見えてきたあとも、川沿いのサイクリングロードはしばらく続いた。

左手には北上川が流れ、川岸には岩が見え、道の横には大きな木が枝を広げている。ところどころ木陰になっていて、朝の強い日差しを少しだけやわらげてくれる。

ただ、不思議なことに、人がいない。これだけ気持ちのよい道なのに、自転車にも歩行者にも、ほとんど誰にも会わなかった。人がいないと、だんだん少し心細くもなる。

そんなことを思いながら走っていたら、途中の薄暗い木陰から、突然、鹿が飛び出してきた。熊でなくて、本当によかった。


北上サイクリングロードに入る

【写真挿入:北上サイクリングロードの看板。草に囲まれた細い道】

少し進むと、「北上サイクリングロード」の看板が出てきた。こういう看板を見ると、つい入ってしまう。私はサイクリングロードが好きなのである。

大きな国道を車に気をつかいながら走るより、川沿いや自転車道を拾っていくほうが、気持ちとしてはずっと楽である。ただし、サイクリングロードという名前がついていれば、必ずしも快適というわけではない。

この先は、だんだん路面がガタガタになってきた。草も伸びていて、道の端はかなり怪しい。いかにも、しばらく誰も通っていないような雰囲気がある。

「これは本当にサイクリングロードなのか」

と思いながらも、ここまで来たら進むしかない。


田んぼの向こうにKIOXIAが見えた

【写真挿入:河川敷の自転車道。遠くに大きな工場建物が見える】

北上サイクリングロードは、いったん川から少し離れたような感じになった。

それでも、河川敷沿いの道を拾いながら、北へ進んでいく。
道は細く、草も伸びているが、いちおう自転車道である。

途中で、同じようにサイクリングしているおじさんに会った。

「この道、この先も続いていますかね」

というような話を少しした。旅の途中で会う自転車乗りとの会話は短い。でも、道の情報としてはけっこう大事だったりする。

そして、この写真を見返すと、左手に大きな建物が写っている。

【写真挿入:KIOXIAの建物を拡大した写真】

拡大してみると、KIOXIAだった。北上にあるキオクシアの工場である。
こんなところにあるのか、と思った。キオクシアホールディングスは、2024年12月に上場した会社である。公募価格は1,455円、初値は1,440円だった。それが2026年6月には、一時10万円台まで上がり、初値から見れば70倍を超える場面もあった。

つまり、上場時に100万円分買って握っていたら、単純計算では7,000万円を超えていたことになる。もちろん、そんなことはあとからなら何とでも言える。まあ、だいたいというか100%私が買った株は下がってしまう。センスないんだろうね。
それでも、田んぼの向こうに巨大なKIOXIAの建物が見えたとき、私は自転車に乗りながら、ついそんなことを考えてしまった。

自転車旅をしているのに、頭の中では投資の反省会もしている。
われながら、なかなか忙しい。


北上花巻温泉サイクリングロードへ

【写真挿入:北上花巻温泉サイクリングロードの標識。花巻駅西口まで7.4km】

今度は、「北上花巻温泉サイクリングロード」に入った。「温泉」という響きが良い。

標識には、花巻駅西口まで7.4kmとある。ここまで来ると、奥州市からかなり北へ進んできた感じがする。

ただし、問題は路面である。サイクリングロードという名前はついているのだが、路面がきれいとは限らない。ところどころガタガタしていて、油断していると尻に直接くる。仕方がないので、途中で止まってクリームを塗り直した。

自転車旅の現実は、青空と田んぼと爽やかな風だけではない。尻の痛みとも、かなり真剣に向き合わなければならない。


花巻を過ぎ、山が見えてくる

【写真挿入:花巻を過ぎた北上川沿いのサイクリングロード。遠くに山並み】

花巻の市街地は、左手に見えたと思ったら、そのまま過ぎていった。

北上花巻温泉サイクリングロードは、まだ北上川沿いに続いている。
相変わらず川そのものは見えたり見えなかったりするが、道は堤防の上をまっすぐ北へ伸びている。正面には山々が見えてきた。

岩手山か、八幡平のほうの山か。
正確にはよくわからないが、とにかく今日これから向かっていく方向に山があることだけは、はっきりわかる。この日の目的地は安比高原である。

「高原」という響きは爽やかだが、自転車で行く場合、それはつまり上るということである。
まだこの時点ではサイクリングロードを気持ちよく走っているのだが、正面に山並みが見えてくると、少し気が遠くなる。

あの山の近くまで、本当に今日中に行くのか。

そう思うと、距離感がおかしくなってくる。
けれど、自転車旅では一気にそこまで行くわけではない。ペダルを一回ずつ回すだけである。一漕ぎ一漕ぎ。
それを続けていれば、いつの間にか地図上の遠い場所に近づいている。


広い道に出ると、少しほっとする

【写真挿入:花巻市コミュニティバスの停留所。広い道路に出る】

花巻市を過ぎてしばらくすると、川沿いの細いサイクリングロードから、広い道路に出た。ただ、ずっとそういう道ばかりを走っていると、少し寂しくなるときもある。

その点、こういう広い一般道に出ると、路面がいい。走りやすい。
そして、途中でコンビニに寄れる。

長距離を走っていると、補給できる場所があるというだけで安心する。
水を買い、炭水化物を入れ(だいたい、バナナ、焼きそばパン、エナジージェル)、必要なら少し休む。これをやらないと、後半にじわじわ効いてくる。


麦畑を見て、ビールのことを考える

【写真挿入:岩手県の標識と黄金色の麦畑。遠くに山並み】

広い道を北へ進んでいると、左手に麦畑が広がっていた。一面が黄金色である。
田んぼの緑とはまったく違う色で、風が吹くと麦の穂がゆらゆら揺れている。

これが小麦なのか、大麦なのか、私には正確にはわからない。ただ、見ているうちに、

「これはビールになる麦なのではないか」と思えてきた。

そう思った瞬間、急に景色が楽しくなる。岩手にはクラフトビールもいろいろある。”いわてぐら”(アルテグラじゃないよ)というビールもあったな。

「この麦が全部ビールになったら、ずいぶん幸せなことだな」

などと思いながら走った。

【写真挿入:麦畑と山並みのパノラマ。まっすぐ伸びる道】

いやはや、岩手の道は広い。

道はまっすぐで、左右には麦畑が広がっている。
そして、その向こうには山々が見える。

空は青く、太陽の光を受けた麦畑は黄金色に光っていた。
水田の緑もよいが、麦畑のこの色はまた別のよさがある。少し乾いた感じがして、風景全体が明るく見える。

遠くの山は、走っても走ってもなかなか近づかない。
近づいているようで、まだ遠い。

それでも、あの山の方へ向かっているのだと思うと、気分は悪くなかった。


盛岡19km

【写真挿入:岩手県交通の大地町バス停。前方に盛岡19kmの標識】

しばらく広い道を走っていると、岩手県交通のバス停が出てきた。

バス停の名前は「大地町」。
その少し先に、道路標識が見える。

写真では少し見にくいが、そこに「盛岡 19km」と出ていた。ついに盛岡である。

すぐ着く距離ではない。しかし、朝に奥州市を出て、北上、花巻を越えて、ずっと北へ走ってきた身としては、「盛岡」の文字が見えただけでかなり気持ちが軽くなる。

それでも、盛岡という大きな街が近づいてきたことは大きかった。ようやく中盤の大きな区切りが見えてきた。


盛岡自転車道に戻る

【写真挿入:盛岡自転車道の看板。北上川沿いのサイクリングロードへ戻る】

国道をしばらく走ったあと、また川沿いの自転車道に戻ってきた。

北上川と合流するようにして、道は再びサイクリングロードになる。
今度は「盛岡自転車道」という看板が出てきた。

この日、ここまでいくつかのサイクリングロードをつないできた。

北上サイクリングロード。北上花巻温泉サイクリングロード。そして盛岡自転車道。

もちろん、全部がきれいに一本でつながっているわけではない。
途中で途切れる。
国道に出る。
路面がガタガタになる。
草が伸びている。
本当にこの道でいいのかと思うこともある。

それでも、北上、花巻、盛岡という主要な町が、こうして川沿いの自転車道で少しずつつながっているのは、のんびり走っていてとても楽しい。

車に追われるだけの移動ではなく、川と田んぼと町をつなぎながら、自分の脚で北へ進んでいく感じがある。

 

岩手山が大きくなってきた

【写真挿入:田んぼの間をまっすぐ進む盛岡自転車道。正面に岩手山】

盛岡自転車道を進んでいくと、岩手山がだんだん大きく見えてきた。道は田んぼの間をまっすぐ伸びている。左右には水田が広がり、道端には白い花が咲いている。車は来ない。空は青い。遠くには岩手山。これ自転車旅で一番幸せな瞬間だ。(ただし、ケツが痛くなければ、、、、)


盛岡市街へ入る

【写真挿入:盛岡市街手前の橋。岩手山と川、交通量の多い道路】

いよいよ盛岡が近づいてきた。大きな道路に入り、交通量もぐっと増えてきた。
たぶん国道4号線だったと思う。川にかかる橋を渡ると、前方には市街地が見え、その奥には岩手山が大きく見えている。

ちょうど前方に、ロードバイクの方が走っていた。

無理にぴったりつくわけではないが、少し距離をあけて後ろを走らせてもらうと、自然にペースが上がった。一人で淡々と走っていると、どうしても速度が落ちてくる。
しかし前に同じ方向へ走る人がいると、不思議と脚が回る。


自転車で盛岡駅に来た

【写真挿入:盛岡駅前に到着。自転車と記念写真】

盛岡駅に到着した。岩手県といえば、やはり盛岡である。

盛岡には以前、観光で来たことがある。わんこそばを食べたり、冷麺を食べたりした記憶がある。たしかその時は、新幹線か車で来たのだと思う。

しかし今回は違う。その盛岡駅の前に、自分の自転車で立っている。そう思うと、ここまで走ってきた実感が一気にわいてきた。

「よく来たなあ」という感じだった。

ただ、この日はめちゃめちゃ暑かった。駅前に着いた時には、かなり消耗していた。

盛岡駅で少し休憩することにした。
こういう時のコーラとパンは焼きそばパンに限る。

このあと、さらに安比高原まで走らなければならない。冷麺もわんこそばもなし。再び走り出す。


盛岡から安比高原へ

【写真挿入:盛岡を出発後、岩手山を左に見ながら北へ向かう道】

盛岡駅で休憩したあと、いよいよ終盤戦に入った。

実は、ここから先のルートは、出発前からけっこう悩んでいた。

青森へ向かうには、いくつかの選択肢がある。
太平洋側をそのまま北上するルート。
内陸を抜けて十和田湖方面へ向かうルート。そして、盛岡から安比高原方面へ進み、秋田側をかすめるようにして北へ向かうルート。

最初は、十和田湖を突っ切るルートも考えた。
せっかく東北を走るなら、十和田湖という名前にはやはり惹かれる。

ただ、距離や獲得標高、翌日の青森到着までを考えると、なかなか簡単ではない。

すでに連日120km前後を走っていて、お尻も脚もかなり消耗している。ここで無理をして山岳ルートに突っ込むのは、ちょっと危険な気がした。

いろいろ考えた末に、この日は安比高原方面へ向かうことにした。盛岡から北西へ進み、八幡平市、安比高原方面へ抜けるルートである。そして、この日の宿は、昼休憩のタイミングで楽天トラベルから予約しておいた。安比高原の温泉付きの宿である。

これが大きかった。「今日は温泉に入れる」


じりじり登る

【写真挿入:232号線沿い。左手に岩手山、まっすぐ伸びる道】

盛岡を出てからは、232号線を進んでいった。

道は広く、路面もよい。左手には岩手山が見える。田んぼの緑もきれいで、空には雲が広がっている。途中にドラッグストアがあった。見つけると寄るようにしている。エネルギー補給である。スポドリ、エネジージェル、バナナ、パン、あとはアミノバイタルの粉を仕入れる。コンビニで買うとすぐ800円くらいになるが、ドラッグストアだと半分ですむ。


八幡平市に入る

【写真挿入:八幡平市の標識前で自撮り】

しばらく登り基調の道を進んで、八幡平市に入った。

いよいよここから、山の方へ入っていくのだなという感じが強くなってきた。

しかし、八幡平市に入ると、目的地の安比高原がぐっと現実味を帯びてくる。

高原ということは、上るということである。それはわかっている。
わかってはいるが、すでにここまでかなり走ってきているので、体はけっこうきつい。

八幡平、安比高原、雫石、田沢湖、、、このあたりはスキーできたことがある。この名前だけでも、いかにも東北の山旅という感じがする。


安比高原は見えているが、宿は見えない

【写真挿入:前方に安比高原方面の山が見えてくる広い道】

前方に、いよいよ安比高原らしき山が見えてきた。

ここまで来ると、今日のゴールが近づいているような気がする。
ただ、問題は宿がどこにあるのか、まったくわからないことである。

写真を見てもわかるように、道は広く、前方には山がある。しかし、宿らしい建物は見えない。

自転車旅では、こういう時間帯がいちばん長く感じる。目的地の地名は近づいている。
ナビ上の距離も少しずつ減っている。でも、実際の景色の中にはゴールが見えない。

「安比高原って、いったいどこまで上るんだろう」そんなことを思いながら漕いでいると、じわじわ進んでいくんだな~


安比高原入口まで来た

【写真挿入:安比高原へ入る手前。正面に安比高原の山、左手に岩手山】

安比高原へ入っていく道の角に、コンビニがあった。ここでいったん止まって、写真を撮った。ここまで来れば、宿まではあと数キロである。

「ああ、やっと来たな」という感じだった。

正面に見えている山が、安比高原の山である。
よく見ると、スキー場のコースらしき斜面も見える。冬ならここをスキーで滑り降りてくるのだろうが、こちらは真夏のような暑さの中を、自転車でじりじり上がってきた。

左手には、岩手山も見えている。

今日の旅の途中からずっと、左手に岩手山を見ながら走ってきた。
その山が、ここでもまだ見えている。なんだか、この日の後半をずっと見守られていたような気分になる。

安比高原は、どこか爽やかなリゾートだ。しかし、自転車でここまで来ると、ただ爽やかというだけではないなにか、充実感がある。


最後のまっすぐな登り

【写真挿入:安比高原のホテル街へ向かう最後のまっすぐな登り】

安比高原の入口まで来て、宿まではあと少しのはずだった。宿は、安比高原のホテル街というか、ペンションやホテルが集まっているエリアにある。地図で見ると、もう近い。距離だけなら、たいしたことはない。

しかし、ここからがきつかった。

写真では少しわかりにくいが、道はじわじわと登っている。しかも、ずっとまっすぐである。先まで見えてしまう。

これが、最後の最後でなかなかメンタルを削ってくる。でも、温泉もこの先にある。

ここまで来たら、もう行くしかない。


懐かしの安比高原

【写真挿入:APPI RESORTの看板。安比高原スキー場・ホテル方面】

ついに、安比高原の中心部に入ってきた。

道の横に、APPI RESORTの大きな看板が出ている。正面の奥に見えているのが、安比高原スキー場の下にある大きなホテルである。

今はインターコンチネンタルになっているが、以前は安比グランドホテルと呼ばれていたと思う。リクルートが開発した、いかにもバブル期らしい大きなリゾートホテルだった。実は、安比高原には少し思い出がある。20代の頃、会社がここに保養所を持っていて、よくスキーに来ていた。その頃は、部屋代がタダ。リフト券もタダ。

今考えると、信じられないような破格の条件である。まだ若く、体力もあり、スキーも楽しく、会社の保養所制度もまだ元気だった時代。安比高原と聞くと、その頃のことを少し思い出す。それから何十年もたって、今度はスキー板ではなく、自転車でここまで来た。20代の自分が、まさか60歳になって自転車で安比高原まで来るとは思っていなかっただろう。懐かしさと、疲れと、ようやく着いたという安心感が入り混じった。

この看板を見たとき、安比高原まで本当に来たのだなと思った。


ついに安比高原に到着

【写真挿入:安比高原の宿泊エリアに到着。スキー場を背に記念写真】

ついに、安比高原の宿泊エリアに到着した。ペンションやリゾート施設が集まる場所まで、ようやく上がってきた。
背後には安比高原スキー場の山が見えている。冬ならゲレンデになる斜面である。

あとは宿に入り、待ちに待った温泉に入り、ビールを飲むだけである。


森のホテルと、コンビニ宴会

【写真挿入:安比高原・森のホテルに到着。ホテル前に自転車】

この日の宿は、安比高原の「森のホテル」だった。

名前の通り、森の中にあるホテルという感じで、落ち着いた雰囲気があった。
中の写真を撮っていなかったのが少し残念だが、部屋は広く、温泉もあり、かなりよい宿だった。自転車も小屋の中に置かせてもらえた。
これは本当にありがたい。

雨が降っても安心だし、夜の間も気にならない。自転車旅では、宿そのものの快適さと同じくらい、自転車をどこに置けるかが大事である。

温泉も非常によかった。結局、夜に何度か入り、朝もまた入った。
たぶん3回くらい入ったと思う。脚にも、お尻にも、心にも効いた。

ただ、少し間抜けな話もある。

宿にはレストランがあるので、何か食べられるだろうと思っていた。ところが、夕食は予約制だったのか、当日では食べられなかった。つまり、夕食がない。そして店もない、、、、、、仕方がないので、さっき必死に登ってきた道を、またコンビニまで下りることになった。

せっかく登ったのに、また下る。そして、あとでまた登り返す。なかなか切ない。

コンビニでは、大盛りスパゲッティと、いつもの鶏レバーのつまみ、そしてビールを買った。それを持って、またホテルまで戻る。

豪華な夕食ではない。しかし、この日の体には十分だった。温泉に入り、ビールを飲み、コンビニのスパゲッティと鶏レバーでささやかな宴会をする。

 

DAY5走行記録

項目 記録
区間 岩手県奥州市 → 八幡平市・安比高原
距離 126.67km
走行時間 9時間44分58秒
平均速度 13.0km/h
総上昇量 827m
平均心拍数 101bpm

翌日は、いよいよ青森へ向かう。ただ、昨日、一昨日につづいて、雷雨警報がでている。また雨雲レーダーをみながらの走りになる。

茨城県守谷〜青森自転車旅 Day4 宮城県仙台から岩手県奥州へ。雷雨をかわし、岩手に突入し、北上川にしびれた日

【写真:Day4の走行記録。仙台から奥州市まで138.06km】

仙台のホテルで目を覚ました。前日は、東北大学の先生と話し込み、仙台市内の熊出没の話に少し笑い、ホテル探しでくたびれ果て、最後はコンビニ弁当とビールで沈没した。そして翌朝である。

この日の目的地は、岩手県奥州市。仙台から奥州まで。あとで記録を見ると、走行距離は138.06km。走行時間は11時間7分39秒。総上昇量は800m。

Gaminデータはこちら

なかなかである。なかなかというか、4日目に入り60歳の半隠居男がやるには、少しやりすぎである。しかし、この時点ではまだ深く考えていない。考えると出発できなくなる。

とにかく北へ行く。青森へ向かって、一日分だけ前に進む。そういう気分で、朝7時ごろ、仙台のホテルを出た。まあ悪いところはないんだけど、このホテルの記憶がほとんどないくらい特徴のないホテルでした。。。値段はりーぞなぶる。

【写真:昨夜泊まった仙台のホテル。ホテルグリーンウィズ】


仙台脱出で、まず削られる

仙台の市街地を抜けるのには、思ったより苦労した。信号が多い。車が多い。
土曜日だから少しは楽かと思っていたが、そうでもなかった。

しかも、道によっては路肩があまりない。しょうがないので自歩道を自転車で走っていると、がたがたと痛い尻に衝撃がきて、これが地味にこたえる。

車に気を使い、信号で止まり、また走り出す。まだ朝なのに、じわじわ体力を削られていく。

しばらく走ると、ようやく景色が変わった。

道がまっすぐになり、路面もよくなり、路肩にも余裕が出てきた。街のざわざわした空気が後ろへ下がり、前には広い道が伸びている。「ああ、やっと走れる道に出たな」

木陰に自転車を立てかけて、少しだけほっとした。この日の最初の小さな峠は、仙台市街だったのだ。

【写真:仙台市街を抜け、ようやく郊外の走りやすい道へ】


古川の文字と、若者ロードのびゅん

仙台を抜けたあとは、国道4号そのものではなく、少し西側、山寄りの道を走った。

前方には山が見える。空は青い。道も悪くない。しばらく行くと、「古川」の看板が出てきた。古川は、昨日なら目的地になっていてもおかしくなかった場所である。
昨日は仙台まで行ったので、今日は古川を通過して、さらに北へ行く。看板を見ると、少し進んできた感じがした。この痛いお尻というやつは、なかなかしぶとい。気合でどうにかなる種類のものではない。今日からクリームを使っているので少しはらくになったような気がする。

そんなとき、後ろからロードバイクの若者が3人、ものすごいスピードで抜いていった。びゅん、である。こちらは荷物を積んで、よろよろ北へ向かっている。
あちらはきれいなフォームで、あっという間に消えていく。「いや、そこまで走れればなあ」と思った。しかし、同じ自転車とは思えなかった。あちらはロードバイク。
こちらは、ほぼ行商である。

【写真:古川方面の看板。仙台郊外から山寄りの道へ】

【写真:小山と田畑を見ながら進む、仙台郊外の快走路】


田んぼ道に入ると、旅になる

このあたりから、道がぐっとよくなった。Ride with GPSで引いたルートが当たったようで、県道264号あたりはかなり走りやすかった。田んぼの横を、まっすぐな道が伸びている。信号が少ない。視界が広い。路肩もある。

こういう道に出ると、体の力が少し抜ける。

国道を走っていると、どうしても「移動している」という感じになる。
しかし、田んぼの中の一本道を走っていると、急に「旅をしている」という感じになる。左右には広い田んぼ。遠くには低い山。空は青く、雲は白い。「ああ、こういう道を走りたかったんだよな」そう思った。

【写真:県道264号と思われる、田んぼの中の走りやすい道】

【写真:国道を外れ、田んぼの中の一本道へ】


大衡村の万葉と、日本の胃袋

田んぼの向こうに、植え込みで作られた文字が見えた。

「万葉クリエートパーク」

最初は、走りながら見てもよく読めなかった。あとで調べてみると、このあたりは宮城県黒川郡大衡村。万葉クリエートパークは、現在は「タカカツ万葉パーク」とも呼ばれる広い公園らしい。なぜ東北の村に「万葉」なのか。大衡村には「入生田」という地区があり、万葉集の歌人・大伴家持の終焉の地という説や、万葉集に詠まれた植物「アサザ」にゆかりがあるとされているらしい。そのため、村では「万葉の里」づくりを進めてきたという。

もちろん、走っているときはそんなことは知らない。ただ、田んぼの向こうに大きな文字があり、青い空があり、広い宮城の田園風景があった。自転車で走っていると、こういう看板に妙に引っかかる。通り過ぎればただの風景だが、あとで調べると、その土地の小さな入口になる。

そして、このあたりの田んぼがまたよかった。水を張った田んぼに、空が映っている。
苗はまだ小さい。茨城より北に来たせいか、生育も少し遅いように見えた。

道そのものは、特別な観光地ではない。ただの農道であり、ただの田んぼである。

しかし、よく考えると、これはただの風景ではない。日本の食を、胃袋の底から支えている大水田地帯である。コンビニのおにぎりも、旅先の食のご飯も、家で炊く白米も、こういう田んぼから来ている。自転車でその横を走っていると、ふと、ありがたいなと思った。しかし、田んぼは偉大である。

【写真:田んぼの向こうに見えた「万葉クリエートパーク」の文字】

【写真:水を張った田んぼが広がる、宮城県北部の道】


古川駅。まだ半分にも届かない

田んぼ道を抜けて、古川駅に立ち寄った。仙台から古川までは、だいたい40kmほど。
この日の目的地である奥州市までは、まだかなり距離がある。

駅前で写真を撮る。ヘルメットをかぶり、サングラスをして、自転車は少し離れたところに立てかけてある。いかにも自転車旅の途中という姿である。ただし、顔はあまり元気そうではない。まだ40kmほど。しかし、すでにけっこう疲れている。

「今日は長いな」

古川駅前で、そんなことを思った。古川は、昨日なら目的地にしてもよかった場所である。しかし今日は通過点である。ここからさらに岩手県まで行く。

そう考えると、なかなか気が遠くなる。などと言いながらも、あまり深く考えてないところが俺もいいところだ?

【写真:古川駅前。仙台から40kmほど進んだところ】


県道59号で稼ぎ、雷雨で止められる

古川を過ぎてからは、県道59号に入った。国道4号のような大きな幹線道路ではない。
そのぶん、車が少ない。これがありがたかった。道幅もそこそこあり、交通量も少ない。まわりには緑が多く、ところどころ山の気配も出てくる。こういう道に入ると、少しずつ距離を稼げる。

スピードが出るというより、止められない。信号で止まり、車を気にして、また走り出すという細かいストレスが少ない。ただ淡々と、ペダルを回していける。

このまま行ければよかった。しかし、そう簡単にはいかない。この日も雷雨が心配な日だった。Ride with GPSで引いたルートは、少し山沿いを通るコースだった。
車も少なく、走りやすい道だったので、そのまま行ければかなり気持ちよく距離を稼げたはずである。ところが、途中から空の様子が明らかに変わった。青空に、どす黒い雲が広がってくる。風も急に冷たくなった。これはまずい。これは来る。

そう思って、近くのコンビニに避難した。すると、まもなく本当に降ってきた。
しかも小雨ではない。けっこうな豪雨である。

結果的に、コンビニで1時間ほど雨宿りすることになった。もしあのまま山沿いの道を走っていたら、かなり厳しかったと思う。雨だけならまだしも、雷が絡むと自転車ではどうにもならない。

雨がやみ、そろそろ出発しようかと思ったところで、コンビニにいた地元の仕事帰りらしいおじさんに話を聞いた。

「この一週間ぐらい、山沿いは雷が多いから、国道4号のほうに戻った方がいいよ」

というようなことを教えてくれた。こういう地元情報は強い。スマホの天気予報も見るが、その土地で仕事をしている人の肌感覚には、やはり重みがある。そこで山沿いのルートはあきらめ、国道4号線寄りに戻ることにした。脚力だけではどうにもならないことがある。天気、風、道、そして地元のおじさん。この日は、コンビニに逃げ込む判断と、そのおじさんの助言に救われた。

【写真:古川から先は、県道59号のローカルな道へ】

【写真:雨上がりの田んぼ道。黒い雲が去り、西の空から晴れてきた】


奥州、一関、そして岩手県

国道4号線に戻ると、車は多くなった。大型車も通る。自転車で走っていて楽しい道かと言われると、そうでもない。しかし、雷雨の山沿いを走り続けるよりは安全である。
この日は距離も長い。多少車が多くても、確実に北へ進むほうを選んだ。

しばらく走ると、青い道路標識に「奥州」「一関」の文字が出てきた。

これはうれしかった。この日の目的地は奥州市。一関は、岩手県に入って最初に意識する大きな町である。看板に目的地方面の名前が出てくると、気持ちが少し変わる。
地図の上の遠い地名だったものが、いま走っている道とつながる。

そして、ついに岩手県に入った。道路脇に「岩手県 一関市」の看板が見えた。
ここで宮城県を卒業である。守谷を出てから、茨城県、栃木県、福島県、宮城県と走ってきた。そして、岩手県である。地図で見れば、ただ県境をひとつ越えただけだ。
しかし、自転車でここまで来ると、そのひとつがかなり大きい。

「なかなか、よく走ってきたな」そう思った。良し行くぞと、元気が戻った。

【写真:国道4号線に戻ると、奥州・一関の文字が見えてきた】

【写真:ついに岩手県一関市へ。宮城県を越えた】


鬼死骸と一関駅

岩手県に入ってから、国道4号線の裏手のような道も走った。写真の標識は、岩手県道260号。「一関平泉線」とある。そして、このあたりで目に入ったのが、なんとも強烈な地名だった。

「鬼死骸」読みは「おにしがい」。

近くには「熊注意」の看板だけでなく、「鬼注意」というしゃれた看板も出ていた。
熊は本当に出るかもしれないが、鬼はさすがに出ないだろう。いや、出てもらっても困る。

あとで調べてみると、このあたりには、かつて「鬼死骸村」と呼ばれた地域があり、坂上田村麻呂が大武丸を討ち、その亡骸を埋めたという伝説があるらしい。

もちろん伝説である。しかし、東北を自転車で走っていると、こういう伝説が妙に生々しく感じられる。茨城、栃木、福島、宮城を越えて、岩手に入った。ここはかつて、都から見れば遠い北の境界に近い場所だったはずである。そこに、鬼とか、蝦夷とか、田村麻呂とか、そういう名前が残っている。

普通の県道を走っているだけなのに、標識ひとつで急に歴史と伝説が顔を出す。

こういう変な地名に引っかかってしまうのも、自転車旅の楽しみである。

その後、一関駅に着いた。

「ようこそ一関温泉郷」と書かれた駅の看板が見える。温泉郷、、、、このあまーい響き、焼き鳥の良い匂い。思わずここでゴールにしようとおもったが、まだまだはしれるぜー古川を過ぎ、雷雨をかわし、国道4号線に戻り、岩手県に入ったころから、少しずつ体が動き始めている。

不思議なもので、自転車旅では、朝の調子が悪くても、そのままずっと悪いとは限らない。これはこのたびの毎度のことである。

【写真:県道260号。一関平泉線と、気になる「鬼死骸」の地名】

【写真:一関駅に到着。午前中の不調から、少しずつ調子が戻ってきた】


磐井川を渡り、平泉へ

一関駅を出て、平泉方面へ向かった。途中で川を渡った。
名前は磐井川。磐井川は、栗駒山方面から一関市内へ流れ、やがて北上川に合流する川である。有名な厳美渓も、この磐井川の流れがつくった景勝地らしい。

この川を渡ると、平泉が近づいてくる。

途中、岩手県交通のバス停もあった。

今回の旅では、なぜかバス停の写真をたくさん撮っている。
茨城、栃木、福島、宮城と走ってきて、ここで「岩手県交通」のバス停になった。

バス停は、その土地に入ったことを静かに教えてくれる。県境の看板ほど派手ではないが、日常の交通が変わる。その地域の人が乗るバス会社の名前が変わる。

それを見ると、ああ、本当に岩手まで来たのだなと思う。

左手には栗駒山方面の山並みが見えていた。栗駒山は、いつか行ってみたい山の一つである。行ってみたい山の近くを、自転車で走っている。

登山では山頂を目指す。自転車旅では、その山のふもとの町や川や道を横切っていく。
山に登っているわけではないのに、山の存在を感じながら進んでいる。山登りのひとに、大阪まで自転車では知ったとか、青森まで自転車で走ったというと驚かれるが、こうして麓からみる山に登る方がよほどスゴイ!

【写真:磐井川を渡る。ここから平泉・中尊寺方面へ】

【写真:岩手県交通のバス停。左手には栗駒山方面の山並み】


中尊寺まで来たが、入らない

平泉に入り、中尊寺まで来た。中尊寺。
奥州藤原氏。金色堂。

普通の旅行なら、ここで自転車を止めて、ゆっくり境内を歩くところだろう。

しかし、今回は違った。グルメなし。観光なし。とにかく北へ進む旅である。

中尊寺の入口まで行き、自転車を止めて写真だけ撮った。そして中には入らなかった。

入口の雰囲気はとてもよかった。木々が濃く、石の門柱があり、参道の奥に静かな空気が漂っている。

ここで宿を取って、ゆっくり平泉を歩くのもいいなと思った。実際、その時点でまだ午後3時ごろだった。しかし、まだ走れる。あと2時間、いや3時間くらいは進める。

そう考えると、止まる気持ちにはなれなかった。この旅では、観光地に着くことよりも、青森へ近づくことのほうが優先だった。

【写真:平泉・中尊寺の入口。今回は中には入らず、先へ進む】


夕方の県道237号。ご褒美の道

中尊寺の入口で写真だけ撮り、また先へ進んだ。そこから入ったのが、岩手県道237号線である。ここが、またよかった。

田んぼの間を抜けていく道。左右には、きれいな山が見える。道は広く、見通しもよく、車もそれほど多くない。

時刻はもう午後4時前後だったと思う。太陽は少し傾き始め、景色に夕方の光が混じってきていた。朝から走り続け、雷雨を避け、岩手県に入り、一関を越え、中尊寺まで来た。

普通なら、もうそろそろ今日の宿を探してもいい時間である。しかし、この道に入ると、まだ走れる気がした。ロードバイクで走るためにあるような道だった。
もちろん本当は地元の生活道路であり、農道であり、県道である。しかし、自転車乗りから見ると、これはもうご褒美のような道である。

田んぼの緑。遠くの山。夕方の光。広い空。

その中を、荷物を積んだロードバイクで、ひたすら北へ向かう。

観光はしていない。中尊寺にも入らなかった。うまいものも食べていない。

それでも、この夕方の県道237号を走れたことで、今日は十分に旅らしい一日になったように思えた。

【写真:県道237号へ。田んぼと山の間を走る、夕方の快走路】


北上川と初対面

県道237号を走っていくと、箱石橋に出た。ここで、いよいよ北上川を渡る。

北上川。名前はずっと知っていた。東北を代表する大きな川である。
しかし、自転車でここまで来て、その川を目の前にすると、地図で見ていた名前とはまるで違って感じられる。

橋の上から見る北上川は、静かだった。水面には空と雲が映り、向こうには山が見える。夕方の光が川に落ちて、朝からの長い一日が少しだけやわらかくなるようだった。

「いよいよ北上川を拝めたな」そんな気持ちになった。
自分にとっては、これが北上川との初対面である。

橋の上から何枚も写真を撮った。

川があり、田んぼがあり、山があり、空がある。ぐるりと見回すと、360度、気持ちのいい場所だった。朝の仙台市街では、信号と車に追われるように走っていた。
それが、夕方には北上川の橋の上で、こんな景色を見ている。

一日でずいぶん遠くまで来たものだと思った。

【写真:県道237号・箱石橋から北上川を渡る】

【写真:箱石橋から見た北上川。川と山と夕方の空】

【写真:箱石橋を渡り切ったところから。川、田んぼ、山が広がる】


宿はまだない。しかし夕暮れの田んぼがすごい

県道237号を北へ進んでいくと、やがて県道14号線に入った。

この道も、またよかった。車は少なく、道は走りやすい。まわりには田んぼが広がり、その向こうに低い山並みが見える。空には大きな雲がかかり、そのすき間から夕方の光が田んぼに落ちていた。時刻はもう午後4時か、5時近くだったと思う。
一日の終わりが、だんだん近づいていた。少しひんやりしてきている。

ただ、この時点で宿はまだ決まっていなかった。これは少し心細い。
体はもうかなり疲れているはずだが、もう感じなくなっている。
朝7時に仙台を出て、ここまでずっと走ってきた。そろそろ今日を終わりにしたい気持ちもある。

それでも、目の前の道は気持ちよかった。

夕暮れ時の田んぼ道を、自転車で走っていく。風は少し涼しくなり、昼間の暑さもやわらいでいる。田んぼの水面には、空の光がところどころ映っている。

夕暮れの田んぼに、雲のすき間から光が差していた。
水を張った田んぼには、その光が反射している。
苗の列がまっすぐに並び、空と雲と太陽の光が、水面に映っていた。

これは、なんとも言えなかった。少し大げさに言えば、神々しい田んぼである。

朝から138km近く走る日だった。仙台の市街地で削られ、古川でまだ先の長さにうんざりし、雷雨をコンビニでやり過ごし、宮城県を越えて岩手県に入った。
一関、平泉、中尊寺、北上川。いろいろなものを横目に見ながら、ただ北へ北へと走ってきた。その一日の終わりに、こんな田んぼの夕景が待っていた。観光地に入らなくても、名物を食べなくても、こういう一瞬に出会える。
それが自転車旅の面白さだと思う。

【写真:県道14号線へ。夕暮れの田んぼ道を奥州へ向かう】

【写真:夕暮れの田んぼ。雲のすき間から光が差す】

 

北上川は海へ。自分は北へ

夕暮れの田んぼ道を走り、さらに奥州市方面へ向かった。途中で、「一級河川 きたかみがわ」という大きな看板が出ていた。

その下に、「太平洋まで104km」とある。

これが、ちょっと面白かった。

北上川は、このまま流れて、やがて太平洋へ向かっていく。
自分は青森を目指して北へ走っているが、川は海へ向かっている。

太平洋まで104km。

自転車で考えると、まったく行けない距離ではない。
明日そちらへ向かえば、太平洋まで行けてしまうのではないか、という気もする。

しかし、今回の旅はそちらではない。行きたい方向は、海ではなく北である。

川は東へ。
自分は北へ。

そう考えると、道の分岐ではないのに、少しだけ旅の分岐点のようにも思えた。

さらに進んで、藤橋という橋で再び北上川を渡った。

ここから下流方向を見た景色も素晴らしかった。
川幅が広い。
流れはゆったりしている。
両岸には緑があり、その向こうに山並みが見える。

北上川は、岩手県岩手町を源にして、岩手県のほぼ中央を南へ流れ、宮城県へ入り、やがて太平洋へ注ぐ東北を代表する大河である。
幹川流路延長は249km、流域面積は10,150km²。
東北第一の大河とも呼ばれるらしい。

そう思って眺めると、目の前の川が、ただの大きな川ではなくなる。

この水は、岩手の山から流れ出し、田んぼを潤し、町を通り、やがて海へ向かっていく。自分はその川を、自転車で何度も渡りながら、北へ向かっている。

東北を走っている。それを、北上川が静かに教えてくれた。

【写真:北上川の看板。「太平洋まで104km」の表示】

【写真:藤橋から見た北上川。下流へ向かう雄大な流れ】


水沢駅に到着。大谷翔平の町だった

ようやく水沢駅に着いた。この日のゴールは、奥州市である。
仙台を朝7時ごろに出発して、ここまで138kmほど。
時刻はもう午後6時を過ぎていたと思う。

駅前で自転車と一緒に写真を撮った。水沢駅の横には、奥州市の大きな塔があり、そこに大谷翔平選手の応援幕が掲げられていた。ただし、到着した時の自分は、そんなことをちゃんと見ていなかった。後から写真を見返して、「あれ、大谷がんばれって書いてあるな」と気づいた。

調べてみると、奥州市は大谷翔平選手の生まれた町である。なるほど、そういうことだったのかと思った。

考えてみれば、平泉では奥州藤原氏の中尊寺の前まで行き、奥州市では現代のスーパースター、大谷翔平選手の故郷にたどり着いたことになる。

歴史の教科書とメジャーリーグが、同じ一日の中に並んでいる。

しかし、そのときの自分には、そんなことを味わう余裕はほとんどなかった。

とにかく、宿である。水沢駅の近く、商店街の中に宿を取ることができた。
自転車を持ち込めるかが心配だったが、なんとか大丈夫だった。

これでようやくほっとした。宿が決まると、一日の緊張が一気に抜ける。

すぐにコンビニへ行き、ビールを2本買った。
大盛りのパスタと、大好きな鶏レバーの煮込みも買った。

138km走ったあとのコンビニ飯とビールは、かなりうまい。

部屋に戻り、ビールでひとり乾杯した。、風呂に入った。

そして、ほとんど何も考えずに、パタンと寝た。

Day4。
仙台から奥州市へ。
宮城県を越え、岩手県に入り、北上川を渡り、水沢まで来た。

長い一日だった。
でも、よく走った一日だった。

【写真:奥州市・水沢駅に到着。大谷翔平選手の応援幕の前で】

茨城県守谷〜青森自転車旅 Day3 福島から仙台へ 雨と熊と、そして東北大学

3日目の朝を迎えた。昨日は旨いものを食おうとおもったが、疲れているので宿のすぐそばの居酒屋にはいったら、これがおお外れ。ビールや飯がまずく、また、大騒ぎの団体もいて食べきらないですぐ出てしまった。このひどい体験でこれ以降は、外で食べずホテルでコンビニ弁当と缶ビールで過ごすことになる。

前日は福島まで160km以上走っていた。その疲れが足に残っている。

宿泊したのは福島駅前のシルクホテル。かなり年季の入ったホテルだったが、自転車をそのまま部屋に持ち込めるのがありがたかった。

 

阿武隈川と蔵王を眺めながらスタート

ホテルを出て4号をまず走る。間もなく阿武隈川を渡る。遠くには蔵王連峰らしき山並みが見えていた。


快適そうな林道へ入ったら熊がいた

Ride with GPSで作ったルートは、国道4号から少し山側へ入る道だった。福島市街を見下ろす景色はよかった。ここまでは良かったんだけど、、、

ところが、交通量の少ない林道は思った以上に寂しかった。しかも疲れた脚にはきつい上り坂が続く。さらに「熊注意」の看板。iPhoneでAmazon Musicを大音量で流しながら走った。


宮城県へ突入

 

林道を抜けて国見インター付近へ出た。そこからは国道4号へ戻る。

白石市に入り、福島県から宮城県に入った。県境を越えると、やはり少し達成感がある。ただ、空はかなり曇り。予報では、雷雨がそろそろ迫っている。雨雲レーダーをみながらどこで避難しようかと思案しつつも、できるだけ進むことにする。


蔵王エコーラインの看板

途中で蔵王エコーラインの案内標識が現れた。以前、蔵王へ走りに来たことがある。蔵王から山形へ降りるルートだったが、雪でエコーラインが閉鎖になり、すぐ手前で断念した。いつか改めて挑戦したい。


白石で雷雨に捕まる

【写真:白石付近の橋、自転車のフロントバッグに雨カバー】

白石周辺から空模様が怪しくなった。雨雲レーダーを見ると、この先1時間ほど強く降るらしい。近くのマクドナルドへ避難した。結果的には正解だった。


白石川サイクリングロードが気持ちいい

【写真:白石川沿いのサイクリングロード】

雨が止む頃には風も暖かくなった。再び走り始める。白石川沿いのサイクリングロードは本当に快適だった。

【写真:白石川と阿武隈川の合流付近】

白石川はやがて阿武隈川へ合流する。遠くには海沿いの工場群のようなものも見え、海が近いのだと感じた。


仙台へ向かう長い道

【写真:仙台港方面を見ながら走る広い道】

サイクリングロードを離れると、今度は広い道を北へ進む。途中、仙台港を右に見ながら走った。

【写真:「仙台10km」の標識】

そしてついに、仙台 10kmの標識が出てきた。これにはかなり元気が出た。ただ、まだまだ田んぼの真っ平ら平地である。


都会に入っていく

【写真:宮城交通のバス停】

田園風景が少しずつ都会に変わっていく。宮城交通のバス停を見ると、いよいよ仙台に近づいた実感があった。天気の悪い中、田舎道を走り続けていたので、天気が良い都会はありがたい。

【写真:名取川の長い橋】

仙台手前の名取川。とにかく橋が長かった。橋の向こうには大きな街が見えていた。

【写真:仙台市街へ入っていく広い道路】

田んぼ道を抜け、ついに都会へ入ってきた。


仙台駅に到着

【写真:仙台駅前で自転車と記念撮影】

今日は仙台でゴールすることにした。仙台には仕事で何度も来ている。仙台には仕事やプライベートで何度か来たことがある。しかし、いつも新幹線か車だった。今回は自転車で来た。それが何とも面白かった。


お尻が限界だった

ただ、この頃にはお尻の痛みがかなり強くなっていた。ビブショーツも新調した。
それでも痛い。お尻はこれまで20年の自転車生活であまり痛みを感じたことはないのだが、どうやら擦れてしまっているらしい。仙台市内の自転車専門店を探し、シャモアクリームを購入した。明日からこれで何とかなるだろうか。


東北大学青葉山キャンパスへ

【写真:東北大学青葉山キャンパス入口】

せっかく仙台まで来たので、親しくしていただいている東北大学の先生を訪ねることにした。ところが青葉山は名前の通り山の上にある。福島から100km以上走った後の青葉山の登りは、正直きつかった。研究室に着くと、先生にも助教の先生にもかなり驚かれたが、めちゃめちゃ喜んでもらえた。お茶を飲みながら、しばらく楽しく雑談した。


仙台にも熊がいる

【写真:熊出没注意・イノシシ注意の看板】

帰り際に見つけたのが、熊出没注意の看板である。しかも仙台市のど真ん中の公園である。さらにイノシシ注意まである。東北大学の建物の近くでも熊がでてきたらしい。
朝は福島の林道で熊におびえ、夕方は仙台で熊注意を見る。東北の人たちは、本当に熊と共生しているのだと思った。


ホテル探しに苦戦

研究室で話し込んでしまい、市街地へ戻った頃には夕方6時近く。金曜日だったせいか、ホテルがなかなか取れない。公園のベンチで30分以上、スマホで検索しながら電話をかけ続けた。ようやく一軒確保できた時は本当にほっとした。もう外へ出る元気はない。コンビニで弁当とビールを買う。部屋で飲みながら、「今日はよく走ったな」

と思った。福島から仙台まで106km。雨もあった。熊もいた。お尻も痛かった。

それでも仙台まで来ることができた。ビールを飲み終える頃には、もう眠気が勝っていた。ベッドに倒れ込むようにして、そのまま眠った。

いよいよ明日は岩手県だ。


Day3記録

  • 区間:福島駅 → 仙台駅

  • 走行距離:106.7km

  • 走行時間:11時間01分

  • 獲得標高:648m

    •  

Day4へ続く。

守谷から青森へ Day2 さくら市から福島駅へ 阿武隈川を北へ走る

 

Gaminデータはこちら
朝は早かった。栃木県さくら市のホテルを出たのは7時だったと思う。

まだ車も少なく、国道4号は静かだった。

今回は距離を稼ぐ日だ。

前日に那須塩原まで届かなかったので、今日はできるだけ北へ進みたい。

だから基本ルートは4号線。

しかし、自転車旅というのは不思議なもので、まっすぐ最短距離を走ろうと思っても、気が付くと面白そうな道へ吸い寄せられてしまう。


4号線沿いからは、朝日に照らされた日光方面の山並みがよく見えた。男体山や日光白根山かもしれない。

田んぼには水が張られ、風もほとんどない。

遠くに見える山々が、なんだか「北へ行け」と言っているようだった。

途中では小さな川が流れ、その向こうには山形新幹線や東北新幹線の高架が見える。

今回の旅は、これからしばらく新幹線と並走する旅でもある。新幹線はあっという間に通り過ぎていく。こちらは時速20kmにも満たない。だが、自転車には自転車の速度というものがある。景色の匂いや風の温度は、この速度でなければわからない。


4号線の裏道へ入ると景色が一変した。

田んぼ道が広がり、水路の水は驚くほどきれいだった。水の流れる音だけが聞こえる。

近くに中学校があって、なにか中学生がハアハアいいながら自転車を漕いでいる。とけいをみると8:20。遅刻ギリギリかな。

こういう道を走っていると、自転車旅というより、どこかへ迷い込んだような気分になる。東北道の巨大なトンネルの横を抜ける道もあった。

高速道路のすぐ横なのに、こちらは誰もいない。

巨大な文明の脇を、自転車でこそこそ進んでいく感じが妙に面白い。


気が付くと那須塩原市に入っていた。

本来なら前日のゴール地点だった場所である。看板の前で写真を撮りながら、

「昨日はここまで来たかったんだよなあ」と思う。まだ朝なのに、すでに少し得をした気分だった。


その後、立派な公園を見つけた。芝生が広がり、大きな木が日陰をつくっている。

こういう場所を見ると、自転車乗りは反射的に休憩してしまう。木陰に自転車を止め、持参した焼きそばパンを取り出した。焼きそばパンは自転車旅の優秀な補給食である。

炭水化物の塊だ。しかもなぜか外で食べると異常にうまい。もりもり食べた。


その公園の看板を見て、ふと気付いた。

余笹川ふれあい公園。あれ?ここ見たことがあるぞ。しばらく考えて思い出した。

那須高原ヒルクライムのスタート地点だった。私はこの大会にすでに3回出場していて、来月も4回目の参加を予定している。毎年、自宅から車でやって来る場所だ。それが今回は自転車で走ってきている。守谷からここまで。そう考えると、なんだか妙に可笑しかった。

このあたりの道は那須高原ヒルクライムにつかっているだけあって、ほんとに走りすい。

駅が現れた。あれ、バスの看板をみると福島に入っている。

 

福島県へ入る頃には、「みちのく自転車道」が現れた。

 ここからは阿武隈川沿いを北上していく。初日は鬼怒川だった。

今日は阿武隈川だ。川を変えながら北へ向かう。なんとなく日本列島を縫っているような気分になる。

阿武隈川は大きかった。左岸を走り、橋を渡り、今度は右岸を走る。また橋を渡る。

そのたびに違う景色が現れる。

遠くには郡山市街。そして安達太良山。さらに磐梯山。百名山の常連たちが並んでいる。

郡山の市街地をつうか。良く来たモノでアル。


安達太良山は以前から登ってみたいと思っていた山だ。

いつか登ろうと思っていた山の近くまで、自転車で来ている。旅というのは面白い。

登山と自転車は別の趣味だと思っていたのに、山を見るとまた別の旅の計画が始まってしまう。「今度はあそこに登ろう」そんなことを考えながらペダルを回していた。


本当は郡山で終わる予定だった。しかし、この日の道はあまりにも走りやすかった。

農道のような静かな道。きれいな舗装。向かい風も強くない。気が付くと、「福島まで行けるんじゃないか」という気になっていた。旅先ではこういう勘が案外当たる。

またまたみちのく自転車道の看板。「みちのく一人旅」を歌いながら、まさに1人はしる。

また、橋を渡った。


二本松市では突然パトカーが現れた。

もちろん本物ではない。交通安全の巨大な看板だった。しかし運転席には警察官の写真まで入っていて妙にリアルだ。疲れていたせいもあり、思わず笑ってしまった。福島まではあと少し。こういうくだらないものが妙に元気をくれる。


いったん川をはなれ農道へ。ここが快走路で距離をかせいだ。

夕方になった。いよいよ福島市だ!

空には夏の雲が広がっていた。

阿武隈川を離れたり戻ったりしながら進み、最後に再び川を渡る橋へ出た。橋の上から見下ろすと、川の向こうに福島市街が広がっている。その瞬間、「ああ、今日はここまでだな」と思った。朝、さくら市を出たときには遠かった福島が、今は目の前にある。

自転車旅では、距離は数字ではなく実感になる。だから街が見えた瞬間がうれしい。


福島市街へ入り、ついに福島駅へ到着した。駅前の木製の大きな看板が印象的だった。

163km。いや、細かく言えば166km近く走った一日だった。センチュリーライドである。駅前で写真を撮る。自転車も、自分も、よく頑張った。


しかし到着しても終わりではない。今度は宿探しである。楽天トラベルを見ながら電話をかけ、自転車を部屋へ持ち込めるホテルを探す。これが意外と難しい。ようやく駅から2〜3分の場所にあるシルクホテルを見つけた。自転車ごと部屋に入れる。

これが決まった瞬間、本当の意味でこの日の旅が終わった。


部屋でようやく腰を下ろした。コンビニで買ったビールをぐびりぐびり。栃木県さくら市から福島駅まで。阿武隈川を北へたどりながらの166km。長い一日だった。それでも不思議と疲労感より満足感の方が大きい。

そして思った。青森まで、本当に行けるかもしれない。旅はまだ続く。